認知症を予防するためには良質で適量の睡眠が必要

現在、65歳以上の高齢者の7人に1人がかかっていると言われる認知症。2025年には、5人に1人が認知症にかかると言われている。働き盛りの世代の方にとっては、認知症と言われても他人事に聞こえるかもしれない。しかし、認知症にかかりやすくなるのは、生活習慣が大きく影響する。特に、睡眠不足や睡眠の質の低下など、日頃の睡眠が影響を与えることが分かっている。今回は、認知症を予防するために知っておくべき睡眠の知識中心に紹介していく。


認知症とは

認知症は、物忘れや認知機能(記憶・思考・理解・計算・言語・判断などの知的な能力)の低下によって日常生活に支障をきたす病気である。物忘れや認知機能の低下は、何らかの障害を受けることで脳の神経細胞が死滅、減少していくことが原因で起こる。認知症になると、身体的・精神的な面に広く影響を及ぼす。認知症には様々な原因があり、大きく分けて以下の3つに分類される。

アルツハイマー型認知症

加齢に伴って何らかの原因で、アミロイドβたんぱくという脳内の生活ゴミが溜まっていく。これが異常に溜まってしまうと、脳の神経細胞を壊してしまい認知症になる。アルツハイマー型は、認知症の原因として最も多いものである。症状は、軽度の人格障害(大多数の人と違う反応や行動をすること)として始まることが多い。不安・抑うつ・睡眠障害・軽い物忘れが出現する。

レビー小体型認知症

脳幹や間脳、大脳皮質に多数のレビー小体という小さな塊が出現する。これが異常に溜まってしまうと脳の神経細胞を壊してしまい認知症になる。レビー小体型は、認知症の原因の中では2割程度である。症状は、幻覚・妄想などから始まり、徐々に物忘れなどの認知機能が障害される。

脳血管性認知症

脳血管障害が原因となってかかる認知症のこと。脳血管障害には、脳梗塞・脳出血などがある。脳の血流が阻害されたり出血したりすることにより、脳の神経細胞が壊されて認知症になる。脳血管障害に伴うため、急激に症状が出現する。記憶力が障害されたり、異常な行動をしたりすることがある。まだらな形で認知症状は出現する。

認知症を予防するためには睡眠がポイント

認知症と睡眠は深く関係している。認知症として最も多いアルツハイマー型認知症の原因となるアミロイドβたんぱく。認知症を予防するためには、脳内の生活ゴミと言われるアミロイドβたんぱくを排出することが大きなポイントになる。この役割を果たすのが睡眠である。人間は睡眠によって、脳内にあるアミロイドβたんぱくを排出する仕組みになっている。そのため、適量で良質の睡眠時間を得ることが認知症予防にとって重要となるのである。

認知症予防に必要な睡眠時間

適量の睡眠時間が必要だが、一体どのくらいの睡眠時間を確保すればいいのだろうか。認知症にかかるリスクは、睡眠時間が6時間以下、8時間以上の場合に高くなる。よって、認知症を予防するには、6~7時間程度の睡眠が適量と言える。

不足した睡眠時間を昼寝でカバーすることができる

働き盛りの世代の方々の中には、睡眠時間が6時間以下という方も少なくないのではないだろうか。日本は先進国の中でも平均睡眠時間が最も短く、30~50代は平均睡眠時間が7時間を切ってしまっている。このように睡眠時間が不足している場合には、昼寝によって補うこともよい方法となる。60分以上の昼寝をしてしまえば、夜の睡眠に悪影響を与え、逆に認知症のリスクが高まる。そのため、60分未満の昼寝を取り入れるとよい。

良質の睡眠を心がける

適量の睡眠時間を得るためには、入眠障害や中途覚醒のない良質の睡眠が必要である。良質の睡眠を得るために注意する点をいくつか挙げていく。

就寝の3時間以上前に夕食を終える

睡眠中には、胃腸などの消化器官も休むものである。しかし、睡眠時に胃腸の中に食べ物が残ってしまうと、睡眠中にも消化器官が働かなければならなくなる。起床時に消化活動が終わらなければ、不快感につながる場合もある。食べた物を消化するには、3時間程度の時間が必要であるため、就寝の3時間前までには夕食を終えておいたほうがよい。

就寝前にパソコンやスマホの画面を見ない

パソコンやスマホが発するブルーライトが睡眠に悪影響を与える。ブルーライトは、日中の太陽の光に近いために覚醒状態を促してしまう。特にスマホは、画面の近くで見てしまうために影響は大きくなる。影響が大きくなると不眠症などの睡眠障害を招いてしまう恐れもあるため、注意が必要である。

お風呂にゆっくりとつかる

熱いお湯につかると身体が興奮し交感神経が優位となってしまい、眠りを妨げられる。そのため、37~39℃程度のぬるいお湯にゆっくりつかるとよい。ゆっくりつかることにより、リラックス効果を得ることができ、副交感神経が優位な状態となる。

就寝前に軽めの運動を行う

激しい運動を行うと、交感神経が優位となってしまい眠れなくなる。良質の睡眠を得るためには、軽めの運動をするとよい。具体的には、ストレッチやヨガなどがある。ゆっくりと身体を動かし、全身の筋肉をほぐしリラックスするよう心がける。長時間行う必要はなく、数回だけでも効果的である。

カフェインの摂取には注意する

カフェインは摂取して30分後に最も効果が高まる。そのため、昼寝の前にはコーヒや紅茶などでカフェインを摂取することにより、すっきりとした目覚めになる。しかし、就寝前の摂取には注意が必要である。就寝6時間前のカフェイン摂取でも睡眠が1時間程度は阻害されることが認められている。そのため、カフェインの摂取は、就寝の7時間前くらいまでにしておく。

生活習慣病も予防する

認知症のうち、約8割を占めるアルツハイマー型認知症と脳血管性認知症は、糖尿病や脳血管障害をはじめとする生活習慣病との関連が強い。そのため、認知症を予防するには、生活習慣病を予防することが重要となる。

規則正しい生活をする

できるだけ同じくらいの時間に就寝、同じくらいの時間に起床することで生活のリズムを整える。前述したように適量で良質の睡眠を心がけることはもちろん、起床時には、朝日を浴びて体内時計をリセットさせることも効果的である。

適度な運動をする

18~64歳は、健康づくりのために3メッツ以上の強度の運動を毎週60分行うことが必要である。3メッツの強度の運動は、ウォーキングや軽いウエイトトレーニングなどが挙げられる。例えば、週に2回、30分のウォーキングを行うなど、それほど苦しい運動ではない。これを長期間にわたって継続することが大切となる。

栄養バランスの整った食事を心がける

炭水化物やたんぱく質、各種ビタミンなどをバランスよく摂取することが大切である。炭水化物・塩分・脂質の摂りすぎには特に注意する。忙しい生活の中で、朝食をとらないこともあるだろうが、できるだけ三食規則正しい食事を心がける。また、無理なダイエットなどはできるだけ避けるのは当然である。

嗜好品には注意する

タバコやアルコールなどの習慣には注意が必要である。タバコは吸わないに越したことはないが、できるだけ1日の喫煙数を減らすことが大切となる。また、アルコールについては、特に就寝前のアルコールの取りすぎにより、睡眠が浅くなる、中途覚醒が起こる、利尿作用によりトイレに行くなど、睡眠の質だけでなく量にも影響を及ぼす。少量であれば、寝つきをよくする効果があるため、適度な量の摂取を心がける。

まとめ

認知症の予防には、適量で良質の睡眠が重要なことが分かった。また、生活習慣が大きく関与していることから生活習慣病の予防も併せて行うことが必要である。認知症は、主には高齢者がかかる病気だから関係ないと考える方も多いかもしれない。しかし、長期間にわたる生活習慣によって認知症は引き起こされてしまう。そのため、若い世代でも睡眠や生活習慣に注意をすることが必要である。超高齢化の進む日本社会、年齢を重ねていき誰もが認知症にかかってもおかしくない。健康な老後のために、認知症の予防について頭の片隅にでも留めておかれることをおすすめする。
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