正しい筋肉疲労回復方法でトレーニングを充実させる


筋肉疲労はなぜ起こるのか

乳酸が筋肉疲労を引き起こすのか

筋肉疲労と聞くとまず思い浮かぶのは乳酸。しかし、長年、疲労物質と考えられてきた乳酸は悪い物質ではないと分かった。乳酸には、筋肉の収縮の阻害を防ぐ働きがあるため、疲労物質ではなく、逆に疲労を防ぐ物質と考えられている。

筋肉疲労の本当の原因

身体がやや酸性に傾くため

これは、乳酸が多く産生されることが関係している。乳酸が多く産生される過程で発生する水素イオンの影響によって、身体内が酸性に傾くのである。これが筋肉疲労の原因の一つとなっている。このことから、乳酸が疲労物質ではないことが分かる。

エネルギー源である筋肉中の筋グリコーゲンの蓄えが枯渇してしまうため

身体内のグリコーゲンの約8割が筋グリコーゲンとして蓄えられているため、これが減少してしまえば疲労を感じやすい。エネルギー源である糖の不足が疲労に関連しているということである。

筋収縮が行いにくくなるため

エネルギー源であるATP(アデノシン三リン酸)やクレアチンリン酸が分解されることにより放出されるリン酸によって筋収縮が行いにくくなる。これも筋肉疲労の原因の一つである。

筋肉疲労の代表格である筋肉痛

筋肉疲労で起こる現象に筋肉痛がある。筋肉痛は、ウエイトトレーニングなどで激しく筋肉を働かせたことによって筋線維が傷つくことにより起こる。傷ついた筋線維を修復する際に炎症が起こり、筋肉痛を引き起こしている。筋肉を回復させるためには必要な痛みである。

超回復

筋肉痛の原因である筋線維が傷つき、それを修復させる過程。この期間は、身体が疲労している期間と考えることができる。筋肉疲労回復を理解するために知っておきたいことに超回復がある。筋線維が傷ついた状態から修復されて、元の状態よりも太くなる。これを超回復という。超回復が起こるために必要な休養期間には、24~48時間、48時間~72時間と諸説ある。これは、トレーニングの強度が大きく関わり、回復には個人差もあるため、筋肉疲労を経験しながら休養期間を調整していくことが必要である。

筋肉疲労回復にはどのような方法があるのか

筋肉疲労の原因を理解すると、回復を促すために大きなポイントとなるのは血流の促進とエネルギーの補給ということが分かる。大きなポイントである血流の促進とエネルギー補給を実現するための方法をいくつか挙げていく。

血流の促進

適度に有酸素運動を行う

ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動を行うことが効果的である。運動後のクールダウンとして行うことはもちろん、休養日としても有酸素運動を行うことにより血流の促進をはかる。長時間や負荷の高い有酸素運動は、筋肉疲労の原因であるエネルギー源の枯渇を招いてしまう。そのため、筋肉疲労回復を目的とした有酸素運動は、会話をしながら行うことができ、軽く汗ばむ程度の強度で20~30分くらい行うとよい。有酸素運動は、筋肉の収縮機能を回復させるためには最もよい方法である。

ストレッチを行う

筋肉疲労を感じている部位を中心にストレッチを行うことも効果的である。ストレッチには、血流の促進効果があることは広く知られている。筋肉が疲労すると、筋肉の緊張やこわばりを招くこともある。こうした状態にあると血流は阻害されてしまうこともあり、ストレッチは必要な運動といえる。運動後や入浴後など筋肉の温度が上がっている際に行うとより効果的である。

マッサージをする

筋肉の疲労により起こる緊張やこわばり、コリなどを取り除くことができるマッサージも効果的である。マッサージにより血流の促進も期待できる。マッサージを受動的に受けるだけでなく、自らマッサージしたり、ストレッチポールなどを利用して行ってもよい。

ぬるま湯にゆっくりと入浴する

37~39℃程度のぬるま湯にゆっくりとつかると副交感神経優位の状態となり、筋肉疲労回復に効果的である。身体が温まることにより血流の促進も期待できる。40℃以上の熱いお湯につかると交感神経優位の状態となってしまい、逆効果となってしまうため注意が必要である。

エネルギー補給

糖質(炭水化物)

筋肉疲労の原因として、エネルギー源である筋肉中の筋グリコーゲンの蓄えが枯渇してしまうことがある。それを考えると、糖質によってエネルギー源を補給することが効果的である。パンやおにぎり、バナナなどの糖質(炭水化物)を運動直後や休養の際に食べるとよい。

たんぱく質

筋肉は水分を除くと約8割がたんぱく質で構成されていることから、たんぱく質を摂ることも大切である。たんぱく質は、基礎代謝量を高めるためにも必要な栄養素である。基礎代謝量が高いということは、血流が促進された状態といえる。そのため、肉類や魚類、大豆食品などのたんぱく質を多く食べるとよい。ウエイトトレーニングなどで筋肉を鍛える場合は、運動直後の30分にたんぱく質を摂るとより効果的である。運動直後に食事をするのは難しいことが多く、プロテインなどのサプリメントを利用するとよい。

ビタミンB群+C

筋肉疲労回復のためには、ビタミン類も大切な栄養素の一つである。ビタミンB1は、炭水化物を身体の中で使用するエネルギー源であるグリコーゲンに変える働きを持っている。同様にビタミンB2は、脂質を、B6はアミノ酸を、B12はたんぱく質や脂質をエネルギー源に変える働きがある。ビタミンB群を摂るには、豚肉やレバー、魚類などを食べるとよい。また、ビタミンCも筋肉疲労回復には大切な栄養素である。ビタミンCを摂るには、果物やピーマン、ブロッコリーなどを食べるとよい。

サプリメント

食事だけでは筋肉疲労回復のために必要な栄養素を摂ることが難しい場合は、サプリメントの服用を考慮するとよい。特に、筋肉の分解を抑えてエネルギー源にもなるBCAAを含むアミノ酸系サプリメントを選ぶ。BCAAは、バリン・ロイシン・イソロイシンの3つの必須アミノ酸のことである。このうち、ロイシンが筋肉の合成に大きく関わっていることが分かっている。

筋肉疲労回復のためにしてはいけないこと

栄養の偏った食事をする

筋肉疲労回復のためには、炭水化物やたんぱく質、ビタミン類をバランスよく摂ることが大切になる。当然のことながら、栄養の偏った食事は筋肉疲労回復を阻害してしまう恐れがある。

栄養ドリンクを飲む

栄養ドリンクは、含有されるカフェインの効果により、スッキリと目が冴えたりすることはあるが、筋肉の疲労回復を得ることはできない。また、長期的に飲むと健康を害する恐れもあるため、飲む際には注意が必要である。

熱いお湯に入浴する

40℃以上の熱いお湯につかると交感神経優位の状態となってしまう。交感神経は、運動時などの身体が活動的な時に優位となる自律神経である。交感神経が優位となってしまうと、かえって疲労を感じてしまうため、筋肉疲労回復にとっては逆効果となる。

不規則な生活をする

夜更かしをしたり、睡眠時間が短くなったりすると、全身を休める時間が不足してしまう。ストレスの多い社会で、日本人の平均睡眠時間は他の先進国と比較して短くなっている。必要な睡眠時間には個人差があるが、7~8時間の睡眠は必要である。

まとめ

筋肉疲労の原因としては、エネルギー源が不足してしまうことが大きなポイントになっていることが分かった。筋肉の疲労を回復させるためには、血流の促進、エネルギー源の補給が必要である。今回は、正しい筋肉疲労回復方法をいくつか紹介した。これらを簡単なものから実践することによって筋肉疲労回復を促し、毎日の仕事やトレーニング継続に役立ててみてはいかがだろうか。日常生活やトレーニングを充実させることが期待できる。
ライザップ
ライザップ