筋トレや運動が鬱を予防するということ

現代社会は、経済的に豊かとなり、科学技術の高度な発達などによって誰でも便利で快適な生活を送ることができる。その反面、職場での複雑な人間関係や長時間労働などがストレスとなり、鬱などのこころの病に苦しむ方が増えている。この問題に対して、運動習慣を持つことがうつ病やうつ状態の予防につながると認められている。しかし、運動習慣といっても、どの程度の運動が必要なのだろうか。ここでは、メンタルヘルスを維持するために必要な運動について詳しく紹介していく。


運動をするとなぜスッキリとした気分になるのか

誰でも、筋トレなどの運動をして汗をかくと、身体がスッキリしたり気分が良くなったりした経験があるのではないだろうか。これは、運動をすることによって、身体の中で様々なホルモンが分泌されることによって起こる。ここでは、筋トレなどの運動をすることによって人間の身体の中に分泌されるホルモンについて紹介していく。

ホルモンとは

ホルモンは、身体の中で作られている化学物質で、様々な機能をコントロールする役割を担っている。人間の身体の中には100種類以上のホルモンが存在し、身体の内外で環境変化が起きても、常に身体は正常な状態に保たれる。
ホルモンの分泌が過剰となったり不足したりすれば、様々な病気を招くこともある。ホルモンの中には、運動によって分泌が活性化されるものがある。ここでは、運動を行うことによって分泌が活性化されるホルモンを中心にみていく。

成長ホルモン

成長ホルモンは、たんぱく質を合成して筋肉を成長させることに関わっている。また、脂質の代謝を促して体脂肪の蓄積を抑える。体脂肪を燃焼させる、すなわち代謝を促すことにつながる。成長ホルモンの分泌が減少すると、やる気が低下したりイライラしやすくなる。子どもにとって必要なイメージがある成長ホルモン。しかし、大人にとっても重要なホルモンの一つと言える。

テストステロン

テストステロンと聞くと、ドーピング問題で耳にしたことがあるかもしれない。これは、人間の身体の中でも分泌される男性ホルモンである。筋肉増強や骨格の発達に関わり、男性的な身体を作るものである。テストステロンの分泌が減少すると、うつ病、意欲低下、性欲低下を引き起こす。分泌を増やすには、大筋群、高重量でハードな筋トレなどの運動が効果的である。

セロトニン

セロトニンは、三大神経伝達物質と呼ばれる脳内ホルモンの一つである。別名、幸せホルモンとも呼ばれる。精神の安定に関わり、気分を高揚させる、ストレスを軽減する、ストレス耐性が高まるなどの役割を担っている。また、睡眠に関与するホルモンであるメラトニンを作る材料にもなり、セロトニンの分泌を活性化させることで快眠にもつながる。セロトニンの分泌を活性化させるには、規則正しいリズミカルな運動を行うとよい。例えば、ウォーキングやランニング、エアロビクスなどが挙げられる。

ドーパミン

ドーパミンは、三大神経伝達物質の一つである。運動で汗をかいた後にスッキリとした気分になるのは、この働きによるもの。ドーパミンは、意欲の高まりや快楽などに関与している。心地よい運動を行うことでドーパミンの分泌が活性化されると、腰痛などの慢性的な痛みが軽減することも報告されている。ドーパミンの分泌が不足すると、パーキンソン病の原因になり得る。

ノルアドレナリン

ノルアドレナリンは、三大神経伝達物質の一つである。集中力や思考力を働かせることに関与している。また、脂肪を分解させ、基礎代謝量の向上にも関わっている。ノルアドレナリンの分泌が不均衡となると、パニック障害やうつ病などを引き起こす。

エンドルフィン

エンドルフィンは、別名、体内性モルヒネや脳内麻薬とも呼ばれている。モルヒネと呼ばれているだけあり、実際のモルヒネの約6.5倍の鎮痛作用があるとも言われる。ケガをしても運動に集中していると痛みを感じないのは、エンドルフィンによる効果もある。その他、エンドルフィンが関与する現象に、ランナーズハイがある。長時間走り続けたときに次第に身体が感じる高揚感のことである。

メンタルヘルスを維持するためにはどのような運動が必要か

運動を行うと、様々なホルモンの分泌が活性化されることがわかった。分泌されるホルモンは、筋肉などの成長や基礎代謝量の向上といった運動への効果だけでなく、意欲やうつ状態などメンタルヘルスに対しても大きな役割を果たしていることがわかる。筋トレなどの運動を行うことが、身体的な部分だけでなく精神的な部分にもよい影響を与えるのである。では、メンタルヘルスを維持するためには、どのような運動を行ったらよいのだろうか。

メンタルヘルスとは

メンタルヘルスとは、心の健康のことである。

うつ病などの精神疾患に悩む方だけの問題ではない。現代社会は、複雑な人間関係や長時間労働の問題などのストレスが多くあり、メンタルヘルスの問題にも注目が集まっている。

心が健康な状態とは、前向きな気持ちを安定的に保ち、意欲的な姿勢で環境に適応することができている状態である。働き盛りの世代にとっては、職場環境だけでなく家庭環境など、様々な状況に適応していく必要がある。健康管理は、身体的な問題だけでなく精神的な問題も含めて行っていく必要があるだろう。身体に対して健康診断を受けるように、精神に対してもストレス診断などを受け、メンタルヘルスにも気を配ることが重要である。

運動の頻度と種類

メンタルヘルスを維持するためには、運動頻度として、週2~3回、30分程度の運動が必要である。うつ病やうつ状態を引き起こす原因についてはっきりとわかっていないが、生活習慣が発症と関係するということはわかっている。

その中でも、運動習慣のないことがうつ病やうつ状態を引き起こす。

まず大切なのは、運動習慣を身に付けることである。運動習慣がしっかりと身に付いたら、頻度についても考慮していくとよい。うつ病やうつ状態を改善させるための効果的な運動は、規則正しいリズミカルな運動である。ウォーキングやランニング、エアロビクスだけでなく、ヨガや水泳なども効果が実証されている。

筋トレ

うつ病やうつ状態を改善させるためには、セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンの三大神経伝達物質をより分泌させることが効果的である。規則正しいリズミカルな運動が効果的であるため、筋トレであれば、高重量で行うことは避け、トレーニングをリズミカルに反復できる負荷で行うとよい。運動強度が高いほうが抑うつ症状はより軽減する傾向ではあるが、低強度でも効果は認められている。

有酸素運動

うつ病やうつ状態、不安な気分を改善させるためには、ウォーキングやランニング、エアロビクスなどの規則正しいリズミカルな運動を行うとよい。有酸素運動をはじめとした規則正しいリズミカルな運動により、セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンの三大神経伝達物質がより多く分泌されるためである。うつ病などの病気となった場合には、有酸素運動が運動療法として用いられることもある。

うつ病やうつ状態になってしまった場合

うつ病やうつ状態が重度になってしまった場合でも運動は効果的なのだろうか。

ストレスの多い現代社会では、15人に1人がうつ病にかかるリスクがあるとされており、誰もがかかる可能性のある精神疾患の一つである。うつ病やうつ状態になってしまう原因は、今のところはっきりと分かっていない。ここまで説明してきたような運動を習慣として身に付けることが、メンタルヘルスを維持するための予防になる。うつ病やうつ状態が重度になると、抑うつ気分や興味・喜びの減退、頭の働きや動作が緩慢となるため、運動を行うこと自体が難しくなる。症状が軽くなるかもしれないからといって、無理に運動を行うことは避けるべきである。そういった場合には、すぐに専門の医療機関等で治療を受けることが必要である。

まとめ

うつ病やうつ状態、不安な気分を改善させるためには、運動習慣を身に付けることが必要である。
運動の種類としては、規則正しくリズミカルな運動が効果的である。筋トレや有酸素運動をバランスよく取り入れるとよい。メンタルヘルスの維持に必要な身体活動量は、生活習慣病予防と同程度で十分とされている。うつ病やうつ状態の予防は、生活習慣病の予防にもつながる。ストレスの多い現代社会を生き抜くために、運動習慣を身に付けて、身体的にも精神的にも健康な状態を手に入れてみてはいかがだろうか。
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